業界歴21年の経営コンサルが語る!  中小企業の実践的経営ノウハウ!

YMTコンサルティング(株)から中小企業の改善事例をお届けします。

社長に最も必要とされる能力とは?

      2021/03/21

みなさん、こんにちは。

YMTの髙橋です。

「緊急事態宣言 再延長!!」

首都圏では、更に2週間伸びました。
合計2ヶ月半に渡る自粛生活となりますね。

そして、その後、初めて迎えた週末。
原宿・渋谷の人出は、前週の2倍に増加したそうです。

これ以上、国民に自粛を求めてもムリなのでしょう。
解除条件は満たしたにもかかわらず、約束は守られなかったのですから。

 

会社経営でも、似たようなシーンに遭遇することがあります。

 

例えば、

「目標利益を達成したのに、約束した成果報酬を支払わない。」

 

この経営判断をされると、言うまでもなく、その会社の改革は頓挫します。

人参をぶら下げて、走るだけ走らせて、直前でその人参を取り上げるのですから。

その経営者も、まさか目標達成することはないだろうと、軽はずみに約束したのでしょう。

 

その理由(言い訳)を聞いてみると、

「まだ決算が確定してないから・・・」だそうです。

何のために、毎月、正確な予想損益をつくり、経営会議を実施してきたのか?

 

また、期末に「生命保険の年払い加入」で経費を増やし、目標未達にされたケースも。

黒字で、目標利益も確保したのですから、後付けでゴールを変更するのは反則です。

 

その結果、優秀な社員から順に会社を辞めていくことになります。

そして、会社の改善課題は「残った社員の信頼回復」へと変わる。

 

今回の緊急事態宣言の再延長により、その過去の出来事を鮮明に思い出しました。

まったく困ったものです。

 

さて、今回のテーマは、

『社長に最も必要とされる能力とは?』です。

 

恐らく、多くの方は「リーダーシップ」「営業力」「自社業務への精通」と答えるでしょう。
いずれも正解です。

しかし、社長といえども「完璧人間」ではありません。
すべての能力を持ち合わせている方は稀でしょう。

また、創業者と後継者とでは異なるケースもあります。

その中でも『リーダーシップ』
社長業にとって、最も重要な能力だとお思いでしょう。

しかし、長年、経営コンサルしてきた所感としては、少し異なります。

『リーダーシップ』は「必要条件」ですが「絶対条件」ではない、と思います。

 

なぜなら、リーダーシップがないと思える社長でも、業績を伸ばす会社があるからです。

その一方、リーダーシップのある社長であっても、あまり業績が伸びない会社もあります

後者の特徴は、経営者がワンマンな反面、指示待ち社員が多い。

社長ひとりの力で、社員全員を引っ張っていくのには限界があるのでしょう。

 

私が思う『社長に最も必要とされる能力』とは?

① 決断力

② 自己反省力

過去の経験から、このように絞られました。

 

【社長に最も必要な能力①(決断力)】

会社は、日々、様々なことを決定しなければ、業務はスムーズに進みません。

昇給、賞与、採用、人事異動、社員教育、目標、投資、社内イベントなど。


経営コンサルとして最も困るのは?
社長が決断しないこと。

最終的な決断は、社長がするしかないのに・・・。

しかし、そのような社長が言うことは、

「しばらく検討してから・・・」

「皆の意見を聞いてみて・・・」


『考え過ぎる人は成功しない』
と勉強したことがあります。

人は考え過ぎると「失敗したとき」のことを想像するそうです。
なので、失敗したらマズイので「今回はやめておこう」と行動が抑制される。
その結果、決断できず、チャンスを逃します。

ゴルフ⛳でも、似たような経験がありませんか?
例えば、ショートホール。目の前に「池」「崖」があるとします。
すると、それらのハザードを意識して、あえて、そこに目掛けて打ってしまう・・・。
「このホールはスキップして」とはならないので、失敗イメージを実現させてしまう経験。

なので、ネガティブな発言を控え、「大丈夫」「できる」とポジティブに考えることが重要。
仕事においては、およそ、命を取られることはないのですから。

また、社員と相談しても適切な判断はできません。
社長とは、おかれている立場、見ている視点が異なるので。
その意見が自分と異なる場合、社長はそもそも聞く耳を持たないのでしょう。

 

(決断できない社長の特徴)

① 新しい挑戦をしない(特に費用を要すること)

② 固定費の削減など、確実なことはする。

③ 「やらない」という決断はする。

何もしなければ、失敗することはありませんが、成功することもありません。
むしろ、チャンスを棒に振った分、成長の機会を失います。

それでは何のために経営しているのか?となります。
経営とは「投資と回収」の繰り返しです。
「決断」を先送りすれば、そのうち、もっと良い何かが生まれてくるのでしょうか?

たいていの会社では「役員会」を実施されていることでしょう。
しかし、中小企業の場合、「意思決定機関」というより「役員教育の場」です。
あるいは「社長の考えを役員へ浸透させる場」です。

中小企業の役員は「経営陣」というより「優秀な社員」のことだからです。
そのため「業務」に精通していても、「経営」には馴染みがない方が大半です。
従って、多数決で決めることが適切だとは限りません。

「中小企業の社長は孤独だ」と多くの方が言います。その通りだと思います。

実際、借入金の連帯保証は、社長一人が背負っているわけですし。
そのため、会社が破綻すれば、社長は自己破産します。
しかし、社員は一時的に職を失っても、再就職すれば再生できます。

なので「雇っている側」「雇われている側」の間には、撤去できない壁があるものです。

そのため、社長は、他人に委ねるのではなく、自分ひとりで「決断」すべきなのです。

 

私は、今から8年前、2013年4月に独立・起業しました。

私の実家は、サラリーマン家庭です。

そのため、正直、自分で会社を創業するなど考えてもおりませんでした。

しかし、あることがきっかけで「人生最大のターニングポイント」を迎えます。

当時、経営コンサルタント歴13年。

仕事はガッチリやっておりましたし、起業に伴う知識も十分あるはず?

気持ちを除けば、準備はいつでもOKでした。

ただし、自分が分かったつもりでいるだけで、まだ知らない何かがあるのかも?

と、不安は常に頭をよぎります。

 

この41歳で独立という「人生最大の決断」は、女房にも一切相談しませんでした。

ちょうど、その頃、娘は小学2年生。マイホームの買い替えを検討しておりました。

色々と物件を内覧するものの、なかなか女房のお気に召すような物件にはめぐり逢いません。

しかし、いったん会社を辞め、独立・起業すると、一般的に3年間は住宅ローンを組めません。

そこで初めて、女房に会社を辞めることを伝えました。

 

私 「物件を探すなら、あと半年しかないからな!」

女房「なんで?」

私 「住宅ローンが組めなくなるから」

女房「なんで?」

私 「会社を辞めて、独立・起業するから」

女房「・・・。聞いてないけど」

私 「だって、言ってないもん。今、初めて言ったし」

 

家庭を持っていれば、常識的には、家族へ事前に相談するということになるのでしょう。

しかし、私には相談しなかった理由があります。

それは、女房に相談しても、恐らく、

「もう少し考え直してみれば・・・」

「他のコンサル会社に転職すれば・・・」

と、言うかもしれないと思ったからです。

その結果、自分の決断が揺らぐかもしれないと懸念したからです。

(実際、想定した通り、女房は上記のセリフを言いました(笑))

 

そして、女房の助言に従い、私が考え直したり、同業他社に転職したと仮定します。

数年後、「やっぱり、あの時、会社を創業すれば良かった」と後悔するかもしれない。

そして、後悔の念から、その責任を女房に転嫁するかもしれない。

『後悔、先に立たず』というやつです。

 

しかし、もし誰にも相談せず、自分ひとりで決断すれば、誰の責任にすることもない。

私は、そのように考えたのです。

 

ここで一つ、私は学びました。

重要な決断ほど、誰にも相談してはいけない、と。

 

私の場合、決断は「消去法」でします。

① 広く情報を拾う
② 数値的な分析をする
③ 消去法(した場合の利益は? しなかった場合の逸失利益は?)
④ やるべき時期は?(どの道、やるなら早い方が良い。即決!)

私の好きな言葉の中に「千載一遇(のチャンス)」「一期一会」があります。

従って、私のモットー「即断」「即決」「速攻」

 

多くの方は「即決」することを悪いことだ、と思っている節があります。

即決する=安易な判断

即決しない=熟考した

 

【経営者に最も必要な能力②(自己反省力)】

「自己反省」というと、何か後ろめたい印象を持たれる方がいるかもしれません。
しかし、弊社の研修では「自己反省」は、前に出るためのエネルギーだと指導しております。

若い頃は、誰にでも、ご両親、兄弟姉妹、上司、先輩など、叱ってくれる存在がおります。
そのため、もし間違った方向に進んでも、その過ちに気づかせてくれるものです。
その結果、方向修正を図ることもできるでしょう。

そして、そのような存在は、年を取れば取るほど、次第にいなくなります。
「もう、いい年齢なのだから、あれこれ周囲から言われなくても・・・」と。

しかも、社長になったら、尚更、そのような存在はおりません。
会社の経営トップですから。

つまり、社長職は自分自身で間違いに気づき、自分自身で修正するしかありません。
そのため、多くの社長は、本を読み、セミナーに参加し、先輩経営者から学ぶのでしょう。

 

もし、社長が「自己反省」できない場合、どうなるか?

ドンドン、ずれた方向へ進みます。

 

ある会社で、キーマンの若手幹部に対する嫉妬心から、退職まで追い込んだ社長がおります。

それにより会社の業績は急降下。事業承継も困難な状態に。

役員・管理者は、誰ひとりとして社長に物が言えない。

そうなると、もう、誰もその暴走を食い止めることはできません。

なので、社長職には「自己反省力」が最も必要だとつくづく感じます。

業績が悪化して最も困るのは、連帯保証人である社長自身なのですから。

 

時折、過去のことには振り返らず、将来のことだけ考えて歩んでいこうと言う方がおります。

過去のことをいくら言った所で、今更、取り返しがつかないのだから・・・と。

一見、もっともらしく聞こえますが、全くもってナンセンスです。何も分かっておりません。

 

~ プチ事例 ~

昔、そのセリフを言っていた社長が、会社を2回倒産させました。

その会社は、ローコスト住宅のフランチャイズ店に加盟します。

しかし、過去3期分の「決算書」を絶対に見せようとはしません。

「過去のことはいいから。これからどうしたら良いのかを指導してほしい。」のだと。

つまり、経営コンサルのセオリーを、頑なに回避しようとするのです。

(前回のブログでも書きましたが、決算書から「社長の性格」「社内体質」が読み取れます)

※「財務分析」をご希望の方は、こちらボタンをクリックして下さい。

 

その上、支援の前提条件である合宿研修には、社長自らが遅刻するありさま。

でも、コンサル支援はしてほしいと懇願されます。

そんな社長の言動を見越してなのか、営業マンたちは「天ぷら新規」ばかりを揚げてくる。

(営業の世界で『天ぷらを揚げる』とは、「でっちあげ」「架空」「さぼる」ことです)

 

その結果、新規件数では加盟店の中でトップとなり、FC本部から表彰されます。

実態はどうであれ、「トップ」になって称えられるのが、社長には心地良かったのでしょう。

その後、当然の成り行きとして新規は解約になります(もともと契約自体が怪しいのですから)

しかし、FC本部には「変動ロイヤリティ」という手数料だけは支払う羽目に。

まさに「泣きっ面に蜂」です。

 

冒頭にも書きましたが、「自己反省」とは前に出るためのエネルギーです。

自己反省できない人(浅い人)は、何度でも同じ過ちを繰り返します。

自己反省は、深ければ深いほど、次への改善につながります。

 

 

例えば、朝、寝坊して、会社に遅刻したとします。

その瞬間、顔色は青ざめ、汗だくになって会社へ向かうでしょう。
そして、上司に「明日から意識を変えて頑張ります」と謝罪する。
上司はパワハラを気にして「以後、気を付けるように」と穏やかに注意を促すでしょう。

私の経験上、このようなミスは何度でも繰り返されます。
なぜなら、精神論で片付け、反省が浅いためです。
遅刻を繰り返さないためには、具体的にどう対策するのか?深掘りが必要。

 

一方、交通事故で他人にケガをさせたとします。

大事には至らずとも、警察や救急車を呼び、付近には人だかり。
事故の件は、会社にも知らされます。

普通の人はショックを受け、しばらく気持ちが沈んだままでしょう。
命に別状ないのは幸いとしても、多くの人に迷惑を掛けたのですから。

そして、しばらく運転を控えます。
極端な人は、車を売却して、運転自体をやめてしまうことも。
つまり、同じミスを繰り返すことは、ほぼなくなります。

ミスした事象が大きい分、自ずと「自己反省」も大きくなるからです。

従って、些細なミスであっても、その根本原因は何か?
深く反省をし、繰り返さないための努力が必要。
それが「自己反省」です。

 

「結果」には、必ず「原因」があります(因果関係)

そして、その「原因」は「過去」にあるのです。

そうなった「原因」は、自分の過去の言動・考え方のどこから来るのか?

深く考察し、反省することが必要です。

 

弊社では、このような研修を定期的に行っております。

2泊3日の『M-up研修』。

過去5,500名以上が受講。

 

 

(エピソード①)~財務分析・報告会であった話~

私がまだ20代、駆け出しの経営コンサルタントだった頃です。

支援する会社の社長は、たいてい60代の創業者でした。

報告会では、財務分析に基づき、客観的事実をバシバシと指摘します。
すると、社長の顔は、次第に曇っていきます。
これはいつものこと。

一通りの説明を終えると、分析内容にはご納得していただけます。
そして、その改善方針に向けて、決意されるという流れがセオリー。

ところが、最後に一言。社長から発せられるのは、

「髙橋くん(私)はまだ若いし、うちの業界にはあまり詳しくないかもしれないけど・・・・」

と、嫌みの一言も。

若い人間から正論を突き付けられ、感情的におもしろくないのでしょう。

しかし、こちらもそうなることは先刻承知。
いちいち社長の顔色ばかりを伺っていては、その後の改革が進みません。

そこで、私がいつものように切り替えします。

「社長は、業界には長く携わっておりますが、なぜ、利益が出てないのですか?」

 

もはや「業界常識=世間の非常識」になっているということなのです。

計数をないがしろにし、感覚経営をやっている企業との間でこのようなやりとりが多いです。

若造に腹を立てる前に、この点を反省しないと、会社の再生は不可能。

自分自身で過ちに気づき、自己反省に至るには、客観的事実である計数に強くなることです。

 

 

(エピソード②)~ 改善事例の書籍を読まれた建設業からの問合せ対応 ~

昔、債務超過に陥っている財務内容の厳しい建設業から、支援の依頼がありました。

東大卒で、当時、高級官僚をしている自慢の息子に、将来、会社を継いでほしい。
その時までに、財務内容が良好な会社に改善したいとの要望。

後日、社長を含め、60代の役員3名が、合宿研修(2泊3日)を受講に来られました。

ところが、研修中、その経営陣の言動はシャキッとしない。
返事も蚊の鳴いたような小声で、覇気がない。
他社の新卒社員の方が、よっぽどハキハキしていて、気持ちが良い。

その姿を見た当時の私の上司がヒートアップ⤴⤴


このような会社は「会社が倒産する前に、精神が倒産している」といいます。

会社が破綻寸前にもかかわらず、経営陣に全く危機感がない。
なので、自分たちの言動を変えず、いつも通りに振る舞う。
会社の経営陣がこれですから、社員も当然、危機感を抱くはずがないのです。

しかし、この状態では、到底、会社を再生することはできません。
そのため、私の上司は、覇気のない経営陣を奮起させるべく、敢えて厳しく接したのです。

そして、夕食後、その経営陣は帰ると言い出しました(まだ2日間残ってるのに)。

お客さま気分で受講に来られた研修で、講師から厳しく扱われ、気分を害したのでしょう。

帰り際に、その経営陣が言ったセリフ。

「一寸の虫にも五分の魂だ」

 

後日、その会社のことが気になり、再度、訪問してみました。

社長の奥さん(経理担当)が対応されました。

そして、その奥さんから言われた言葉は、

「うちの主人(社長)は、おたくの研修をお気に召さなかったようですわ」と。

『親の心、子知らず』とでも言うべきでしょうか(我々は息子さんより年下ですが)

この経験から学んだこと。
経営者が身に付けるべき最も重要な能力は?
あらためて「自己反省力」だと気づかされます。

率直に、この会社が破綻しようと、経営コンサルにとっては痛くも痒くもありません。

なのに、なぜ、息子よりも若い経営コンサルが、敢えて憎まれ役を買って出たのか?
そこに気づいてほしかったです。

このような覇気のない経営陣には、優しく接しても何も伝わりません。
もし、そのような感受性があるなら、そもそも倒産の危機には陥りません。

感情的になり、研修を途中退場する前に、なぜ、そこまで考えが至らないのか?
60年以上生き、40年以上働き、職業人生も終盤を迎え「年の功」はないのか?
逆恨みするエネルギーがあるなら、自分自身を変える力に変換できないのか?

このような繰り返しが、今日の経営状態を招いたのです。

恐らく、債務超過に陥るまでに、我々以外からも厳しい指摘を受けてきたでしょう。
しかし、今回の研修と同様、意見をしてくれる人に対し、反発してきたのでしょう。

なお、その数年後に知ったことですが、この会社は他社に買い取られたようです。
この会社にとっては、ある意味、最善の策だったかもしれません。

我々の仕事は、厳しい財務内容であっても、何とかしたいという経営者の要望に応えます。
それが、時折、仇になることも。

息子さんにとっても、この会社を承継するより、高級官僚のままでいた方が幸せでしょう。
わざわざ「地獄行きのパスポート」を握る必要はないのですから。

 

以上です。

次回の投稿もお楽しみにして下さい。

 

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